2007年6月9日

第1便:昭和ヒト桁

昭和ヒト桁
最近の毎日新聞の余録欄で、「戦争、敗戦、勝利、占領、占領地行政、テロ、クーデター、革命騒動、さらに極端な貧困からある程度の豊かさまで、、、ノンフィクション作家の保坂正康は、昭和前期は「人類史の見本市」だという(「昭和史入門」文春新書)」という書き出しで、「昭和史の転換点をなす太平洋戦争開戦の日(上掲、当日の新聞)に、作家の伊藤整は「ああこれでいい、これで大丈夫だ、もう決まったのだ」と書き残し、武者小路実篤は「来るものなら来いという気持ちだ。自分の実力を見せるという気持ちだ」と手記の一節に記し、プロレタリア文学の評論家、青野季吉は「米英軍に対する一戦布告の御勅語を拝す。無限の感動に打たれるのみ」と日記に書いている。」とし、「当時の記録が示すのは、第一級の文化人すら、日本と米国との圧倒的な国力の差を分かっていなかった」と指摘しています。また、それは、上記の文化人たちの不明さをあげつらう為ではなく、当時の「ジャーナリズムが基本的な世界の現実すら伝えていなかった」と同時に、「ジャーナリズムの機能不全が「言論統制」を招いたのではなかったか?」と反省をしています。
私は、昭和ヒト桁(昭和4年、1929年)生まれです。生まれる一年前に満州事変が始まり、その燻りが支那事変に繋がり、更に西欧諸国(イギリス、フランス、オランダ、そしてアメリカ)との摩擦が激しくなり、日米交渉は暗礁に乗り上げ、昭和16年12月8日、日本海軍の真珠湾攻撃で日米戦争、つまり太平洋戦争という自滅的な戦争に突入してしまいました。当時12才だった私の印象は、上記の文化人たちの感慨とほぼ同様でした。ただ子供心に「小人が巨人の足を踏みつけた」ような一種の恐怖感を覚えています。しかし、「連戦連勝」を伝える新聞の大見出しに押しやられ、その恐怖感が次第に消えていっていったことも確かです。

  報道といっても当時はラジオは半官半民のNHKだけ、テレビはまだ空想上の存在で、三大新聞が主な情報源でした。いずれも悲観的なニュースは慎み、勝利のニュースを強調して報道されていました。同時に新聞ラジオは、戦争指導者たちにとって思想的な面でも、大きな役割を果たし、「一億一心」、「挙国一致」、「忠君愛国」、そして人的資源を獲得するため「産めよ殖やせよ」などの標語が続々と登場し、国民に士気向上を叫び続けていました。物資が不足し、国民の生活が苦しくなると、「欲しがりません勝つまでは」などという子供が作った標語がもてはやされたものです。政府の「言論統制」もさることながら、ジャーナリズムの側でも可成り自発的に「戦争貫徹」のプロパガンダを買って出ていたようです。

   戦後、言論の自由が与えられ、各新聞社の記者たちは一時戸惑ったものの、何のこだわりもなく記事が書けるようになったことは、読者にとっても喜ばしいことです。強いて難を言わせていただければ、人権尊重のためか、日本人、外人、有名人、無名人を問わず存命中の人名に「さん」を付ける習慣が何か空々しく気になります。 今日、私どもはアメリカの3大ネットワーク(NBC, CBS, ABC など)のニュースを見ていますが、報道の姿勢に日米の大きな差を感じない訳にはいきません。例えばイラク問題にしても、ハイテクを最大に駆使し、現地から生々しい情報を伝え、ブッシュ大統領の人気の下降振りから、政府要人のスキャンダルまで、統計数字で表示したり、遠慮なく暴露しています。

  いずれにしても、昭和前期に育った私にとっては、今日のジャーナリズムは隔世の感があります。知らず、知らされず、の歪曲情報社会をよく生き存えたものだと思います。「知らない」強さだったのでしょうか、勝ち目のない戦争を「本土決戦」まで引きずられ、何千何万という人命が失われたのが太平洋戦争です。

  残念ながら、あれから60年余り、戦争が絶えた時期があったでしょうか?戦争は再び繰り返されてはなりません。戦争の愚かさを次の世代に伝えることは、私たち昭和ヒト桁族の天命と心得て、この著述を完成させるつもりです。
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第2便は、『ユダヤ人を救った日本人』をお送りいたします。

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